GoogleやFacebookといったグローバル企業の多くが取り入れているOKR。革新的といわれるその仕組みや、従来のシステムとの違いは何なのだろうか。
OKRの基本情報について
OKRは企業が目標を設定し管理する方法のひとつである。製品のライフサイクルの短期化や消費者ニーズの多様化により、企業はスピーディに課題を解決する必要に迫られている。そのためには社内でのスムーズなコミュニケーションが欠かせない。
OKRは社員同士の連携を高めることができるメソッドとして、近年多くの企業から注目を集めている。
OKRとはなにか
OKRは「Objectives and Key Result」の略であり、組織が掲げる目標(Objectives)を達成するために主要な結果(Key Results)を設定することで、企業全体の方向性を明確にする管理方法である。
1970年代に米インテル社で始まったこのフレームワークは、GoogleやFacebookといったグローバル企業で採用されたことから、近年大きな注目を集めている。
OKRの仕組み
OKRは1つの目標(Objectives)に、複数の主な結果(Key Results)が付随する構造である。Objectivesは4〜5程度の数で、多すぎても少なくてもよくないのだ。Key Resultsの数は1つのObjectivesに対し3つぐらいを設定する。
OKRのObjectivesは、シンプルであることが求められる。目標の数は3個程度、多くとも6個以内がよいとされており、チーム全体の意欲を高めるような野心的な内容で、なおかつ短期間(1カ月〜3カ月)で達成できるものでなければならない。
OKRの主なメリットは3つ
世界的に有名な企業で次々と取り入れられるようになったOKRだが、OKRを利用するメリットはどこにあるのだろうか。主なメリットとして3つ考えられる。
1.会社の目標を共有できる
社員が会社や上司からいわれたことだけやっている、と聞くと思い当たる節があるマネージャーもいるかもしれない。
社員が上からいわれたことしか行動に移せないのは、ある意味で仕方のないことだといえる。多くの会社では、会社がどういった方向性でどのような目標で動いているか、社員にまで共有が図れていないからだ。社員も向かう方向がわからない以上、目の前の仕事をこなすしかない。
OKRの導入は、社員の「目標がわからないから命令されたことだけをする」という状況を改善するきっかけになる。OKRは、社員個人の目標を、チームの目標、会社の目標と連動させて設定するためだ。
自分自身の目標と会社の目標が関連付けられているため、会社の方向性が明確になり、社員個人の判断力も向上する。社員がもつ創造性やモチベーションの向上にもつながるだろう。
このように、会社の目標を共有することで、社員の会社への意識を良い方向に変えていけるのが、OKRを取り入れるひとつ目のメリットだ。
2.社内コミュニケーションの活性化
OKRを取り入れると、個人のタスクをチーム全体で共有しやすい。それぞれの目標がチームや会社の目標につながっているためだ。
チームの目標や会社の目標に近づくには、ひとりひとりの目標達成を積み重ねていく必要があるため、タスクを共有したほうが目標達成も近づく。
目標のためにタスクを共有するということは、その分、メンバー間のコミュニケーションも増えるということだ。業務をとおして相談や意見交換の機会が増え、チームワークも促進されることだろう。
また、タスクを共有することによって、メンバー同士で協力する環境も生まれやすくなる。OKRで役職や部門を超えた連帯を築くことができれば、高い目標の達成にも大きく前進するはずだ。
3.業務効率が良くなる
OKRを取り入れると会社における自分自身の役割が明確になる。自分の立ち位置を把握できるようになるため、仕事におけるムダを少なくすることが可能だ。
これは、OKRによって目標達成のために何を優先すべきかが明らかになることが理由である。優先順位がわかることで、成すべき仕事に集中できるのもOKRを導入するメリットといえるだろう。
さらに、OKRは短期的な目標設定に向いた目標管理の方法だ。会社の方針と個人のタスクを常に最新状態にできるため、ビジネスの流れに後れを取ることは少なくなる。会社の方針転換に対して、社員が目標設定で柔軟に対応しやすくなるのもメリットだ。
OKR設定のポイント
Objectivesには高めの数値を設定するが、高すぎる目標はかえって生産性が落ちる。かといって容易に達成できる数値でもよくない。Key Resultsには「難しいが頑張ったら達成できそう」という具体的な数値を設定し、目標の60〜70%の達成度で成功とみなす。
OKRの設定
OKRの設定には、SMARTによるObjectives(目標達成)が重要だ。
SMARTとは「Specific(具体性)」、「Measurable(測定可能な)」、「Assignable(達成可能な)」、「Realistic(実現可能な)」、「Time-related(期限の設定)」の頭文字から構成され、これらの5つの成功要因によって、目標達成の可能性を極めて高めていく方法である。
目標の設定は、組織を挙げて取り組み何とか達成できる数字として、達成率は7割ぐらいが望ましい。また必ず期限を設定し、その都度ObjectivesとKey Resultsを設定し直す。
Objectivesを多く設定しすぎるとそれぞれに矛盾が生じ、形骸化する要因となる。特にOKRを導入したばかりの会社は、初めのうちは目標を少なめに設定した方がよいだろう。
Key Resultsは測定して適切な判断をするため、具体的な数値なければならない。また、一つのObjectivesにつき、Key Resultsは最大5つまでよいとされている。あまりにも多すぎると組織内のコミュニケーションを阻害する恐れがある。
また、OKRは組織全体のコミュニケーション向上を目的としたものであり、Key Resultsの達成率を人事評価に反映するのは本来の目的ではない。
しかし日本企業の中には、OKRを社員の評価の指標として取り入れているケースが少なくない。OKR導入を検討する場合、人事評価は切り離して考えるよう徹底する必要がある。
OKRを進化させたGKA
有名企業に採用され成果を出しているOKRであるが、問題点もある。上から順に落ちてくる構造が、下層では「やらされている」目標になってしまう危険があることだ。OKRを採用する多くの会社は実績があるため、OKRでもなんとか問題なく回っているという可能性も否定できない。
そこでOKR考え方をベースとして新しく考え出された仕組みが、Goalous(ゴーラス)で採用されているGKAである。
GKAはGoal–KR(Key Result)–Actionの略であり、OKRと決定的に違うのは組織としての目標を立てない点だ。上位概念を「ビジョン」のみでまとめ、抽象的な方向性を示すことで個人の解釈の幅を許容する。
OKRは上から下まで組織が正確に紐付いていることを前提としているため、もし途中の部署が間違えたら以下の階層もすべて間違える。GKAはこのムダを無くし、従業員自身が自分で決定する動機を引き出すことができる。
まとめ
OKRとは目標を達成するための結果を明確化することで、組織の方向性を把握し、社員が積極的に仕事に対する目的意識をもつことに一役買っている。しかし、目標が組織全体でしっかり共有できていないと、うまく機能しない可能性もある。
そこで、目標をあえて立てずに、ビジョンを示すことで一人ひとりが目標に対してさまざまな意思決定を下すGKAを導入する手もある。
GKAを採用しているGoalousでは、一つのゴールをみんなで共有し、みんなで互いに能力を補い合い、コラボしながらゴールを目指すことができる。
自由度が高く設定されているので、ワクワクしながら仕事ができるだけでなく、急な変更にも柔軟に対応することが可能なシステムである。もし組織間のコミュニケーションの改善を考えているのであれば、ぜひ検討していただきたい。