JAXAに学ぶチームワーク

チームワークに必要な能力

JAXA(宇宙航空研究開発機構)があるイベントで出したお題だ。

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あなたは宇宙飛行士のリーダーだ。
地球に帰るまでにギリギリの燃料しか残っていない。
このままミッションを続行すべきかどうか。
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Q. あなたは、次のどの行動をとるか?

(1)与えられたミッションをやり遂げねば!それが宇宙飛行士だ。
(2)途中で燃料が切れたら大変。ミッションを中止して地球へ帰ろう!
(3)どうしたら良いのかわからない。みんなの意見をきかせてくれ!

どう考えるだろうか?

宇宙飛行士というのは、あらゆる活動に膨大なコストがかかるため、ミッションを必ず成功させねばならないというプレッシャーと戦っている存在であるというイメージが我々にある。そのミッションは、個人の力だけでは成立しない。だからチームワークにこだわっている。それゆえ、JAXAでのチームワークへの取り組みを研究対象とする組織が多いように思う。

先ほどの正解は、(2)だ。

生命が第一、つまり「生還する」という成果が最も重要であるという優先度をリーダーは見失ってはいけないということだ。

逆に、(1)はミッションをやり遂げることを第一にしているので、生命第一に反するものだ。(3)は、どうしたら良いのかわからないというのがリーダーの発するメッセージとして望ましくはない。リーダーとは、誰よりもゴール達成に熱く、また先を見ていなければならない。せめて選択肢を用意するぐらいの方向性を示すのがリーダーといえる。

JAXA有人宇宙技術開発グループの山口孝夫さんは、チームワークに必要な能力は9つあるという。

1. 状況認識
2. コミュニケーション
3. コラボレーション
4. 自己管理
5. 異文化適応
6. リーダーシップ
7. 不協和対応
8. 意思決定
9. 問題解決

特に、「状況認識」においては、次の3段階で考えればよいという。
正確に現状を把握 > 今後の動きを予測 > 行動計画を立てる
この3段階の認識能力を日々訓練していくと、かなりスピーディーに認識ができるようになるようである。
仕事も同じであるが、現状だけではなく、将来を瞬時に見越すような人はより信頼できる。

「コミュニケーション」はどうか。
ただ自分の思うことをわかりやすく発信するというのは、まだまだレベルが低い。相手がなぜそういったのか、どういう感情か、自分の発言によってどう思うかなど相手を考えて的確に意見することがとても重要であるという。

もう一つ、「コラボレーション」に触れるが、どんな人と一緒にゴールを目指したいか?JAXAの宇宙飛行士は、チームを組んであらゆる過酷な訓練をするらしいのだが、最後にこう質問するようだ。

「一緒に飛びたくない人はだれ?」

結果を逆に解釈すると、次のような人が一緒に飛びたい人になるという。

「いかなる状況でも冷静に状況認識をして、自分を助けてくれるだろうと信じられる人」

やはり、チームワークに必要な能力がここに散りばめられていよう。

コミュニケーションで最強に大事なこと

もう一つ、質問だ。

Q. 10人のチームを5つ作って、その中の3人にこっそりと指示をいい渡す。指示はチームごとに別々だ。次のどの指示をもらったチームがミッションを成功させたか?


(A) みんなの意見に賛成せよ
(B) 何事にも反対せよ
(C) 自由に意見を言い合え
(D) 相互理解の促進に努力せよ
(E) 聞き上手/褒め上手となれ

どうだろう?

あえて先に、一番成果が出ないのはどのチームかを考えよう。

いわずもがな、(B)。今回の場合は3割(3人)が常に反対するというチームだったが、うまくコトが進まない。反対すると、結論の整理に時間を要し、結局前進するのが遅くなる。これでは、時間的に限られた状況の中では通用しない。

本題に戻ろう。先ほどの質問。

正解は 「(D) 相互理解の促進に努力せよ」 だ。

相互理解の促進に努めた3人は、全員が理解できているか具体的な質問をしてその都度確認していったようだ。そうすると、一番速くミッションを達成し、かつ独創的なアイディアも出てきたようである。
お互いを理解するということの重大性をものがたっている。

褒めるとか、否定しないとか、いいたいことをいうことが案外重視されがちであるが、「理解する」ということが何よりも大事だということ。 わかっていないと始まらないということだ。いわれてみりゃそうだ。

つまりは、いかにして必要な情報を与えて、いかに正確にキャッチさせるか、チームワークでのコミュニケーションはそれに尽きるともいえる。

成果を出すチームの条件

先ほどはチームワークに必要な個人の能力について言及したが、今度は条件について触れたい。

宇宙飛行士のような高ストレスの環境において成果を出し続けるチームということに関して、JAXAを調査した株式会社ビジネスリサーチラボはその条件を次の8つに分類した。

高いストレス下でも機能するチームの条件

1. ゴールを重視
2. 助け合う
3. 役割・責任の設計
4. 相互理解
5. 情報・意見の共有
6. 問題解決・改善
7. 主体的なチーム帰属意識
8. 強い信頼関係

※ 各用語は筆者が調整した

以前に記事にした、Googleの結論に酷似しているではないか!

なお、JAXAの採用方針から見えてくるのは、優秀な人材を集めるのではないこと。相当に優秀な人を採用しているイメージがあるのでこれは意外だ。筆記試験においては、得点の高い人よりも、全項目で平均的に点数を取っている普通の人材を採用するということのようである。スーパーマンを選抜するという感覚ではないらしい。むしろ注目するのは、「宇宙に行ってみたいという意志の強さ」であるという。

チーム力の高い人材を採用しているのである。

また、おもしろいのは一人称として「自分が」「私が」という表現を回避するように努めていること

「私のゴール」
「私の成長」
「私のために」
「私が好き」

ではなく、

「チームのゴール」
「チームの成長」
「チームのために」
「チームが好き」

どちらがよいわるいという話を抜きにしても、印象が全く異なるでしょ?

「チームが」・「仲間が」という表現に徹する。

個人の能力には限界があるわけで、だからチームワークを重視する。

よってチームワークを重んじる集団の会話の中で、「私が」・「お前が」が連発されるのは、ただの異常かもしれぬ。

投稿者: Kohei Kikuchi

Kohei Kikuchi is the Goalous project leader.

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