コーチとはなにか

コーチの意味

コーチという語は、ハンガリーのコチ(Kocs)で15世紀から製造が始まった、「(四輪、スプリングおよび屋根を持った大型四頭立て)馬車」のことをコチ(マジャール語:kocsi)と呼んでいたのに由来する。辞書に初登場するのは1556年のことだった。現在でも欧米では、鉄道やバスなどを含めてコーチと呼ばれているようである。抽象的に解釈すれば、人を乗せて目的地まで連れて行ってくれる乗り物をコーチと呼んでいるわけだ。

この本質的な意味は、現在にも引き継がれている。

人を目的地、つまりは「人をゴールまで連れて行ってくれる人」がコーチである。とすれば、コーチングとは人をゴールまで連れて行くことだ。ここで条件がでてくることにお気づきだろう。コーチされる人が、ゴールをもっていることが前提になるということだ。そうでなければ、連れて行く先がないから、コーチはそのコーチたる機能を果たせないことになる。

ちなみに、先に出てきた「コーチされる人」は「コーチー」(Coachee: person being coached)と呼ばれることがある。また、コーチにはコーチャー(Coacher)という別称があり、Wikipediaによれば日本ではこちらの方が先に定着したようであるが、現在は英語圏でもほとんど使われないようである。

コーチは、知識や技術を教える人ではない。クライアント(コーチされる人)がゴール達成に対してマインド以外のすべての条件が整っているという前提に立って、クライアント自身でゴールに進むようにマインドへ積極的に訴えかけるアプローチをするのがコーチである。その点を踏まえて、より正確なコーチの定義をしておく。

『クライアントがゴール達成に向かえるようなマインドを醸成することでその能力を引き出す人』

とする。

※ちなみに、アメリカのファッションブランドのCOACHは、「大切なものを運ぶ」ときに使って欲しいという製品への想いを込めたということのようである。ロゴには馬車が使われている。
COACH

コーチ・インストラクター・ティーチャー

コーチという用語は、馬車の意味から派生して、古くはスポーツの技術を指導する人に対して主に使われていたもの(スポーツマインドコーチングと呼ばれる)であるが、これは現代では「インストラクター(instructor)」という呼称の方がしっくりくるだろう。インストラクト(instruct)とは、「やることを告げること」(to tell someone what to do)という意味だ。似た用語に「ティーチャー」(teacher)もある。これも動詞のティーチ(teach)で考えると、「なんらかの情報を与えて学習をサポートする、もしくはどうやるかを示すこと」を意味している。

インストラクトとティーチは、なかなか区別がつかないほどに、非常によく似ている。両者共通するのは、「知識やスキルやノウハウなどの情報を与えてどのようにやるかを指導するということ」だろう。ただ、どうやったらよいかを見せる要素が多い場合(ヨガとかダンスなど)はインストラクターと呼び、学校や楽器、仕事などで寄り添って理解を促進するという要素が強い場合にティーチャーと呼ぶというニュアンスの違いがある。

しかし、コーチとはインストラクターやティーチャーとは意味合いが全く異なり、人間のマインドに関与する仕事である。

コーチとメンター

これもよく勘違いをする。
メンターというのは、未熟者にアドバイスやサポートをできるほどの経験を積んだ人だ。これは熟達者であり、師匠とかお手本とかと呼ぶに値する。メンターは、クライアントの個人的な成長の方向性を考慮して、そのお手本をロールモデルとして示すという役割の人である。

また、コーチはクライアントのマインドに作用を及ぼすことで、結果としてゴールに対するパフォーマンスを改善することにつなげるが、メンターは経験に裏打ちされた知識を持って人間的な育成に関して幅広く指導しうる。メンターは、クライアントから見れば、「人間としてのお手本」である。コーチは、お手本でもなんでもないので違いが理解できるだろう。

コーチがやること

大前提として、コーチというのは、

「クライアントとそのゴールを大好きでなければならない」

のである。これは意外なようで意外でない。嫌いならコーチとしての力の出しようがない。または、抑圧的な態度などが生まれて、結局「やりたくないことをやっている」状態が生まれてしまってうまくいかない。そして、クライアントを大好きならば、そのクライアントが立てたゴールだって大好きだ。

コーチは、クライアントが必死に考えたゴールに対して良い・悪いの価値判断をする必要がない!クライアントの内発性を削ぐような行為はロクな結果を生まないからだ。コーチは、ゴールが高いものになっているかどうか、あるいは明確さについてのみ言及すればよい。

クライアントの内発的な動機付けを削ぐことには充分な注意が必要だ。自律的なクラインは、外部からいわれたことではアクションを起こさない。
「お前は知識が足りないから、1日1冊本を読んで勉強しろ!」
というように、理由とやるべきことを具体的に述べられても、おそらくそれだけではクライアントは動かない。

俺の知識が足りない?お前の方が足りないだろうよ。なんでお前にいわれなきゃいけないのだ?!毎日忙しすぎて本を読んでる暇はない。なんで1日1冊とか限定されなければならんのだ?というより、とにかく言い方が気に入らない。

いくらでも、不満要素をあげることができる。どうせ、納得できないのだ。納得できたとしてもアクションを起こさないのが人間なのに、納得すらできないと、アクションのスタート地点にすら立てない。仮に、コミュニケーションを重ねて納得し、アクションできたとしても、どうも長続きしそうにないね。

つまり、本人がやりたくてやってないことは、すべて継続的になされることはない。「なんのため?」という目的をクライアントが自分自身で導き出し、心底からそのことをやりたいと思い、さらに継続的にアクションし続けるには、そのことが誰かから承認され成果をあげることを期待され続けるという状態が必須となる。

もう一つ注意すべきは、コーチングとは自分の限られた経験に基づいて指導することでは決してない。自分の経験が他の場合にもそのまま適用できるという勘違いは、罪が重い。
コーチは、ひたすら、

「ゴール達成に対してアゲアゲにすること」

これだけだ。これを積極的に行うのである。

クライアントの現在までの歴史、置かれている現状、思考方法や妙な癖、その他に問題があると感じようとも、それらをすべて「マインドの問題」と捉えるのがコーチである。すべての原因はマインドにあり!として、そのマインドをゴール達成のみにフォーカスして、日々の声がけでアゲアゲにしていく。

アゲアゲの基本は、「ほめる」という報酬だと思う。日本の海軍軍人で、元帥海軍大将の山本五十六の格言では次が有名だ。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず
Source: 山本五十六

これには、コーチングに必要な要素が網羅的に散りばめられていると思う。上記すべての行為がアゲアゲの実体である。この中でも「ほめる」という行為は、クライアントの快感や幸福感に直結する要素となり、次のアクションに繋がるという意味において、ドライブさせるための重要な要素だ。

ほめられると、報酬系の扁桃体が刺激を受けて、ドーパミンが分泌されることは実験でも明らかにされている。ほめかたにもいろいろあるだろうが、結果とそのプロセス、思考方法など細かなところまでしっかり観察して本心でほめ讃えることが肝要だろう。

ほめるのは、簡単で効果的で無料なわけだから、バンバンほめてほめまくるのが基本的なアゲアゲだ。
※ 一方、「短期的集中力」を維持させる手法では、クライアントへの「幸福」と「恐怖」を使い分けることが効果的などといわれるが、それは別の機会に述べたい。

したがって、コーチは大好きなクライアントをよく見て、よく声がけし、勇気づけすることで内発的なやる気を喚起する。そういった1対1のコミュニケーションの結果として、ゴール達成へのモチベーションが上がるという状態を築くことである。

コーチングの必要性

なぜ、コーチングが必要なのだろうか。
まず、クライアントが「現状」に満足するならば、ゴールを立てたり、そこを目指してクリエイティビティを発揮することは必要ない。だからゴールがないので、必然的にコーチングは不要だ。
ゆえに、コーチングの機能を有効化するには、クライアントが現状をなんらかの形で改善したりよりよい方向へ変えたいという野心を抱いていることが前提である。

現状の延長ではないゴールを設定したとして、それに対してこのような族が現れるのである。
「やめておけ」・「無理だ」・「知らん」・「失敗しろ…」。
もう一つは、自己評価の減退である。
「俺なんてできない」・「このゴールに本当に価値があるのだろうか」
という不安。
ゴールは、立てた時が最も高いやる気に満ちている。時間が経つにつれてそれは減退する。上記のような周囲にあふれるマイナスの要素によって、自分への評価が下がり自信がなくなる。

その時である。

コーチがいるのといないのとでは全く違う。自信が違うといっている。一人だけでは、踏み出せない、あるいはマインドを維持・向上できないことがなんと多いか!

たとえば、俺は中身が見える掃除機を作る!という野心的ゴールを持っていたとする。

“成果(吸引したゴミ)が見える”掃除機がこの世に必ず必要だ、と熱望していても、それは(吸引したゴミは見えない)現状を逸脱したものだから多くの人にとって不愉快だ。すると大抵の周囲の反応は、「(嘲笑)」・「流行らないでしょ」・「見た目が汚くてだめでしょ」なんてことになる。ゴールをキル(殺す)されるわけだ。

しかし、コーチがいると全く違う。「やれる!」というマインドをひたすら持ち上げてくれる存在だからだ。自分のゴールへの絶対的なサポーターの存在は、一歩踏み出すのにとても大きい。

一人だけで「現状」と戦うのは、どんな優秀な人物でも、いや優秀な人物ほど(より高いゴールを持っているからして!)難しいのである

誰も支持してくれない世界と、強烈な一人(コーチ)がいる世界。

現状から抜け出したい!とか、もっとよくしたい!という高度な意識を持っている人にとって、コーチングが必要になる理由がおわかりだろう。

かくしてチームはゴールへ向かう

最後に、チーム力が高いという状態の時のマインドを考えたい。

それは、チームのメンバー「全員」がアゲアゲな組織だ。例えば、A -> B -> C の工程があったとして、ほんの1つの工程でつまずくだけで、ゴールへの成果は得られない。つまり、協力が成立しないので、チーム力が下がる。注意したいのは、チーム力があがったから、アゲアゲになるのではない。チーム全員がアゲアゲだから、チーム力があがるのだ。重要なのは、全員ってことだ。

実は、チームというのは、一人でもパフォーマンスの低い人がいたら、全体のパフォーマンスがその低いレベルにまで下がってしまう。ボトルネックになるのだ。もちろん影響力の高い低いはあるかもしれないが、基本的には全員がアゲアゲにならなければ、チームとしての成果はどこかで低いレベルに下がってしまう。そういう原理になっている。

マネジメントとして重要なのは、組織の中にアゲアゲではない人をいかに作らないか。いかにしてそういう人を出さないかなのだ。低いパフォーマンスが存在するおかげで、成果がゼロになるリスクを考えれば、必然的にそうなる。一方で、そういう人を排除していくのがチームのやることなのか?という議論もあるが。

また、最終的には、組織を構成する人すべてが、コーチングのスキルを身につけ、相互にコーチングできるようになることが理想的かもしれない。だれがやったっていいのだから。コーチングボリュームが増加することを目的とすれば、コーチが多い方が有利だ。

アゲアゲになるのは、成果があがることの原因だ。

これはマインドの問題だからこそ、コーチが必要となるのだ!

君が笑うなら、
きっと、みんなも笑うだろう。
コーチは誰よりも大声で笑う。

君が泣いているなら、
みんなは見て見ぬフリをかますだろう。
そのときコーチは、
君より先に泣き終わっている。

JAXAに学ぶチームワーク

チームワークに必要な能力

JAXA(宇宙航空研究開発機構)があるイベントで出したお題だ。

===
あなたは宇宙飛行士のリーダーだ。
地球に帰るまでにギリギリの燃料しか残っていない。
このままミッションを続行すべきかどうか。
===

Q. あなたは、次のどの行動をとるか?

(1)与えられたミッションをやり遂げねば!それが宇宙飛行士だ。
(2)途中で燃料が切れたら大変。ミッションを中止して地球へ帰ろう!
(3)どうしたら良いのかわからない。みんなの意見をきかせてくれ!

どう考えるだろうか?

宇宙飛行士というのは、あらゆる活動に膨大なコストがかかるため、ミッションを必ず成功させねばならないというプレッシャーと戦っている存在であるというイメージが我々にある。そのミッションは、個人の力だけでは成立しない。だからチームワークにこだわっている。それゆえ、JAXAでのチームワークへの取り組みを研究対象とする組織が多いように思う。

先ほどの正解は、(2)だ。

生命が第一、つまり「生還する」という成果が最も重要であるという優先度をリーダーは見失ってはいけないということだ。

逆に、(1)はミッションをやり遂げることを第一にしているので、生命第一に反するものだ。(3)は、どうしたら良いのかわからないというのがリーダーの発するメッセージとして望ましくはない。リーダーとは、誰よりもゴール達成に熱く、また先を見ていなければならない。せめて選択肢を用意するぐらいの方向性を示すのがリーダーといえる。

JAXA有人宇宙技術開発グループの山口孝夫さんは、チームワークに必要な能力は9つあるという。

1. 状況認識
2. コミュニケーション
3. コラボレーション
4. 自己管理
5. 異文化適応
6. リーダーシップ
7. 不協和対応
8. 意思決定
9. 問題解決

特に、「状況認識」においては、次の3段階で考えればよいという。
正確に現状を把握 > 今後の動きを予測 > 行動計画を立てる
この3段階の認識能力を日々訓練していくと、かなりスピーディーに認識ができるようになるようである。
仕事も同じであるが、現状だけではなく、将来を瞬時に見越すような人はより信頼できる。

「コミュニケーション」はどうか。
ただ自分の思うことをわかりやすく発信するというのは、まだまだレベルが低い。相手がなぜそういったのか、どういう感情か、自分の発言によってどう思うかなど相手を考えて的確に意見することがとても重要であるという。

もう一つ、「コラボレーション」に触れるが、どんな人と一緒にゴールを目指したいか?JAXAの宇宙飛行士は、チームを組んであらゆる過酷な訓練をするらしいのだが、最後にこう質問するようだ。

「一緒に飛びたくない人はだれ?」

結果を逆に解釈すると、次のような人が一緒に飛びたい人になるという。

「いかなる状況でも冷静に状況認識をして、自分を助けてくれるだろうと信じられる人」

やはり、チームワークに必要な能力がここに散りばめられていよう。

コミュニケーションで最強に大事なこと

もう一つ、質問だ。

Q. 10人のチームを5つ作って、その中の3人にこっそりと指示をいい渡す。指示はチームごとに別々だ。次のどの指示をもらったチームがミッションを成功させたか?


(A) みんなの意見に賛成せよ
(B) 何事にも反対せよ
(C) 自由に意見を言い合え
(D) 相互理解の促進に努力せよ
(E) 聞き上手/褒め上手となれ

どうだろう?

あえて先に、一番成果が出ないのはどのチームかを考えよう。

いわずもがな、(B)。今回の場合は3割(3人)が常に反対するというチームだったが、うまくコトが進まない。反対すると、結論の整理に時間を要し、結局前進するのが遅くなる。これでは、時間的に限られた状況の中では通用しない。

本題に戻ろう。先ほどの質問。

正解は 「(D) 相互理解の促進に努力せよ」 だ。

相互理解の促進に努めた3人は、全員が理解できているか具体的な質問をしてその都度確認していったようだ。そうすると、一番速くミッションを達成し、かつ独創的なアイディアも出てきたようである。
お互いを理解するということの重大性をものがたっている。

褒めるとか、否定しないとか、いいたいことをいうことが案外重視されがちであるが、「理解する」ということが何よりも大事だということ。 わかっていないと始まらないということだ。いわれてみりゃそうだ。

つまりは、いかにして必要な情報を与えて、いかに正確にキャッチさせるか、チームワークでのコミュニケーションはそれに尽きるともいえる。

成果を出すチームの条件

先ほどはチームワークに必要な個人の能力について言及したが、今度は条件について触れたい。

宇宙飛行士のような高ストレスの環境において成果を出し続けるチームということに関して、JAXAを調査した株式会社ビジネスリサーチラボはその条件を次の8つに分類した。

高いストレス下でも機能するチームの条件

1. ゴールを重視
2. 助け合う
3. 役割・責任の設計
4. 相互理解
5. 情報・意見の共有
6. 問題解決・改善
7. 主体的なチーム帰属意識
8. 強い信頼関係

※ 各用語は筆者が調整した

以前に記事にした、Googleの結論に酷似しているではないか!

なお、JAXAの採用方針から見えてくるのは、優秀な人材を集めるのではないこと。相当に優秀な人を採用しているイメージがあるのでこれは意外だ。筆記試験においては、得点の高い人よりも、全項目で平均的に点数を取っている普通の人材を採用するということのようである。スーパーマンを選抜するという感覚ではないらしい。むしろ注目するのは、「宇宙に行ってみたいという意志の強さ」であるという。

チーム力の高い人材を採用しているのである。

また、おもしろいのは一人称として「自分が」「私が」という表現を回避するように努めていること

「私のゴール」
「私の成長」
「私のために」
「私が好き」

ではなく、

「チームのゴール」
「チームの成長」
「チームのために」
「チームが好き」

どちらがよいわるいという話を抜きにしても、印象が全く異なるでしょ?

「チームが」・「仲間が」という表現に徹する。

個人の能力には限界があるわけで、だからチームワークを重視する。

よってチームワークを重んじる集団の会話の中で、「私が」・「お前が」が連発されるのは、ただの異常かもしれぬ。

オープンの価値

オープンにせよ!というが

世間は「情報のオープン化」という言葉に、どれだけの価値を感じているのか。

クローズドを恐れる人は。
「閉じてるよりよさそうだ」

あんまりどうでもいい人は。
「公開されてもその情報に興味がない」

なにかにつけて説明を求めるような人は。
「説明義務を果たしてて、ありがたい」

ピントがずれた批判として。
「そんなことより、やることやってほしい」

どうせ聞いてないのにこう言う人も多い。
「ちゃんと説明して欲しい…」

SNSが流行りすぎて、近頃こうなる。
「情報が多すぎて見るのが大変…」

そんなイメージかなと。そして、われわれ株式会社ISAOのSpiritsの一節に登場することば。

オープンにつながる

その価値を考えたい。

情報というもの

人間は情報空間で生きている。そしてそのことを人間は薄々知っている。脳のみがすべての認識を生んでおり、もちろん喜怒哀楽を含めての感情も脳にすべて依存している。臨済宗妙心寺派の僧である快川紹喜(Kaisen Joki)が、1582年に恵林寺において焼死したときに残した辞世の句がある。

心頭滅却すれば火も亦た涼し
Source: 快川紹喜(Kaisen Joki)

これはまさに、ファイヤーという超熱い物理的な脅威が身体に迫ろうとも、脳への”脳による”至上命令を出すことができれば、それが涼しいと感じることだって可能なんだという話である。これは、人間が情報空間で生きてることを示している。生きるのが辛いと嘆く者も同じであるが、情報処理のセンスによって最強に不幸なことだって、ハッピーにできる。どう感じるかを選択しているのは脳であるから、セルフコントロール可能だと。

スマホだってそうだろう。
何ら物理的に影響がなくても、ゲームで人を殺したり、冒険したり、コラボってたのしんだりする。人と出会ったり、会話したり、動画をみてたのしんだり。スマートフォンのちっこい画面になにかしらの光る情報が出ているだけで、ありありと臨場感を抱いてしまう。「本当にそうである」、「そのことが発生したのだ」と認識する。繰り返すが、実際に物理現象を見たわけではない。人がそこにいるわけでもない。だから、情報を頼りに生きている。情報に生かされているのだ。

したがって、情報こそが人間生活のクオリティを左右する要素のすべてだということ。

オープンにする価値

情報が閉じられていると、それがなにかわからない。透視という妙な技術を持つ以外にその秘められた情報を得る手段はあるまい。わからないというほんのそれだけの話だが、これが最も深刻な事態を招きかねない。

チームに属するメンバーは、「お互いを理解している」という状態のときに初めて有効なパフォーマンスを発揮するとよくいわれる。人は「わかならい」という因子が多い場合には、動けない、または決して動かないことを意味している。

Googleは、ある研究結果を出した。「効果的なチームを作る5つの力学」についてだ。

1. Psychological Safety (心理的安全性):
不安に思ったり恥ずかしいと感じることなく、チームで動けてる?

2. Dependability (信頼性):
納期通りに高品質な作業をするために相互を頼りにできてる?

3. Structure & Clarity (組織と明確性):
チームのゴール、役割、実行計画は明確か?

4. Meaning of work (仕事の意味):
個人的に重要である何かに取り組んでいるか?

5. Impact of work (仕事が与える影響):
自分たちの仕事が重要であることを根本的に信じているか?

Five Key Dynamics (https://rework.withgoogle.com/blog/five-keys-to-a-successful-google-team/)
Five Key Dynamics (https://rework.withgoogle.com/blog/five-keys-to-a-successful-google-team/)

反対に次の要素はあまり影響がないとしている。
・どこで仕事するか
・コンセンサスに基づいた意思決定
・外向性
・個人の能力
・人数
・仕事の大きさ

この結論は、あくまでGoogle従業員への調査によるものだ。しかし、チーム力向上にとって重要なことを網羅的に示していると感じるし、正しいと思う。したがって、情報のオープンがこの力学体系のどこに影響するかを考えることが、チームにとってのオープンの価値を論考することになる

それはすぐにわかることだ。

基本段階を含む1・2・3、つまり「心理的安全性」・「信頼性」・「組織と明確性」にオープンが強く関わってくる。

組織に関係するあらゆる情報がオープンでなければ、知らないことがどんどん増加して、不安や発言への羞恥心が増加する。心理的に不安定になる。

チームメンバーがオープンにつながっていなければ、相手を知ることができない。ウソもいう。状況もわからない。つまり、信頼性は生まれない。

そして、ゴールや役割、計画がオープンになっていなければ、何を頼りに進めばよいかわからない。自己の存在意義も失ってしまう。

オープンでないと、チーム作りの基礎で思いっきりつまずくということ!

オープンでないと、協働して何かを目指すなんてことが到底不可能なのだ!

オープンにするタイミング

ところで、念のためいっておきたいことがある。

「決定してからみんなにいう」

これは大間違いだ。

「決定する前にいう」
「決定するためにいう」

これが大正解だ。

意思決定する前にオープンにする意義として、「多数の観点から、多様な意見をもらえる」という点がある。あなたの観点は極めて限定的だ。見えないものが見えていない。盲点だらけなんだ。多くの人は、たかが自分の常識や信念の中でしか、物事を判断しようとしていない。そうなると、あなただけの観点でものを見て、あなたの限定的な経験に基づいて判断したことになる。これでは、判断を間違えることがある

また、決定の過程を知っているのと、知らないのとでは理解の深さに雲泥の差がある。なぜ・どのようにそうなったのか?結論だけ聞かされても、理解できないのだ。理解できない場合、人はアクションを起こさない。

ただし、多様な意見を聞くには、情報を処理するスピードとパワーが必要である。聞く力のないリーダーは、オープンには適さない。

チームで真っ先にオープンにするもの

先ほどのGoogleの例に戻ろう。効果的なチームとして成立させるための1・2・3、つまり「居心地よく、信じ合い、なにかに向かう」ためには何をすればいいか

・自分の能力、思想や特性をさらけ出す
・期待された役割を果たすために必死になる
・ゴールとKRを明確に伝える

こえれらはチーム力向上への基礎であり、まずやることだ。

「道」を示す

先ほどの3点目「ゴールとKRを明確に伝える」に関して。

天下有道。則庶人不議。
天下に道が行なわれておれば、庶民が政治にブツブツいうこともない
Source: 論語

「道」とは、メンバーの誰もが納得しうるプロジェクトの物差しであり、到達したい地点や基準となる方法である。Goalous的にいえば、ゴールとKR(Key Result)のことを意味しているといってもよかろう。また、「道が行なわれている」というのは、それが実行されている現状のことだ。

道をオープンにして、道をオープンに行う。

ということは、

ゴールとKR、そしてその進捗をみんながわかるように示す。

どこかでブツブツいう者よ、いなくな〜れ!

以上、オープンの価値でした。

ゴール作成の改善

改善の目的

ゴール作成機能をGKAによりフィットさせ、かつスムースにシンプルに進められるように改善します。近日中にこの新しいゴール作成をみなさんにご提供します。
いくつかの特徴を以下にあげます。

1. 4つのステップで

  • ゴール作成を4つのステップにすることで、それぞれの項目をシンプルに認識して順に進められる。
Create a new Goal
Create a new Goal

2. ラベル

  • ゴールの検索性を高めるために、ラベルを登録できる。
Lavels
Lavels

3. TKR

  • TKR(Top Key Result): ゴール達成に最重要なKR
  • KR(Key Result): ゴール達成への具体的指標を含む主たる成果
  • TKRは、ゴールにつき1つのみ必須で登録する
  • TKRは、KRの中で最高の優先度をとなる
  • TKRが、ゴールを端的に捉える指標となる
  • TKRにより、ゴールへ向かう活動の集中を図りたい
Top Key Result
Top Key Result

4. ゴール達成の最上位基準と目的の廃止

  • KR作成の柔軟性を高めるために、ゴール達成の最上位基準を廃止
  • ゴール達成はすべてのKRを完了することという定義となる
  • 抽象的で主観的欲求を示す概念である「目的」を廃止
  • 「目的」は、「ゴール名」に含めて表現可能
Abolish the Purpose
Abolish the Purpose

アクションをムダにしないためにも

なにがゴールで、なにがそのKRか。この結論を間違えると、すべてのアクションがムダになる。よって、ゴールやKRを短絡的に決定するのではなく、ある程度の時間をかけ、かつ複数の眼で検討を重ねるのがよい。特にKRは、キーとなるものだけにシンプルに絞って、明確な指標として掲げる。それを集中して目指す。その時初めて、アクションがいきる。

ビジネスゴールと主な成果の例をあげる

GKAからの

GKAとはゴール到達への新モデルである。Goal – KR(Key Result) – Action の強力な概念的連携を持ってして、チームメンバーそれぞれが協働してゴールへ向かって進捗することを主目的としている。

GKA
GKA

どっちにしたって、

Goalとはなんだ!
KR(Key Result)とはなんだ!
具体的に例を示せ!

となるので、期待に応えて、いくつか例をあげてみたい。

なお、GKAの詳細はこちらの記事をよんでいただければうれしい。

ゴールとKR(主な成果)の例を考えるとき

ゴールとは、「将来的に達成したい何か」であり、KRとは、「ゴール達成のために必要な指標が具体的に示された主たる成果」である。もっとも大事なのは、ゴールはあなたがしたいこと(want to)であること。内発的な動機づけが微塵もないゴールは、オープンに掲げたところでやがて廃れてしまうのが帰結するところとなる。だって、やりたくもないのだから。

また、KRはアクションするためにある。つまり、運動によってなんらかのアウトプットをするためにある。よって、アクションをイメージできないKRはNGである。また、KRは、容易であってはいけない。不可能であってもいけない。50%ぐらいの成功確率を望めるレベルを目安として、「困難」でなければならない。困難というのは、通常それなりの背伸びをすることを意味する。KRとして、ある商材を「10社に導入する」のか、「100社に導入する」のか。さて、10倍の開きがある。

Which do you choose ?
Which do you choose ?

どう考えるか。

10社なら絶対に達成できる(100%)と想定したら、それは「容易」だ。

逆に、100社となったらいけるかもしれないしムリかもしれない。まあ50%ぐらいでしょうか。となるのであれば、迷わず100社とすればいい。これが「困難を選択する」の意味だ。

100社とした場合、ほぼ確実に10社を超える。仮に60%ぐらいしか達成できなくても60社だ。10社とした場合よりも50社も多い。さらに、10社に到達するスピードも、「容易」なKRを立てるより早いだろう。いいことばかりだ。

達成できないことで、低い評価を得られるなんてバカらしい。プロセスが肝要なはずだ。全力で進めたという実績が大切なはずだ。だから、「何をしたか」が問われなければ、そんな評価はウソっぱちだ!(詳しくはいつか述べたい)

ビジョンの例

ゴールとKRの例に入る前に、たとえば会社であれば、まず全体の方向感が必要だ。それをビジョンと呼ぶ。ビジョンとは、「存在意義(ミッション)をベースとした未来を創造するためのイマジネーション」のことであり、「ありたい姿」とも呼ばれる。チームメンバーをワクワクさせるような象徴的な表現を心がけたい。

Vision-01
お客様をとてつもなく感激させる

Vision-02
世界のどこにも存在しない新規製品を発売する

Vision-03
売上規模を20倍にする

こんな感じで、抽象的だが従業員がピンとくるような、ワクワクさせるものを掲げたいものである。ピンとこさせられるかどうかは、その会社のミッション(存在意義: なぜ我々はこうしているの?)が共有化されているかに依る。

ゴールとKRの例

それではゴールとKRの例を出していく。様々な役割を持つ部門で想定してみた。

営業
Goal: アメリカにおける収益を拡大する
KR-1: Aプロダクトを100社に導入する
KR-2: 営業担当者を30人に増員する
KR-3: パートナー企業を20社に増やす

プロダクト
Goal: Aプロダクトのモバイルアプリを世界に届ける
KR-1: iOS, Androidアプリをローンチする
KR-2: App Storeにて4.0以上のRatingを獲得する
KR-3: 新しいUX設計プロセスを導入する

マーケティング
Goal: Aプロダクトの質の高い見込み客を獲得する
KR-1: ホームページへのPVを300%増加させる
KR-2: オンライン広告からのCVRを5%にする
KR-3: マーケティングの自動化ツールを導入する

情報システム
Goal: 社内情報システムインフラの効率性向上
KR-1: 15の承認システムをすべてオンライン化する
KR-2: イシューのクローズタイムを50%減らす
KR-3: 財務関連プロセスの課題点を20の部門にヒアリング

人事
Goal: 従業員をとびきり仲良く元気にする
KR-1: 元気のよすぎる20代社員を10人採用する
KR-2: 30のマインドトレーニングを実施する
KR-3: 社員への満足度調査から新規3つの施策を提案する

カスタマー
Goal: まったく新しい顧客サポートを提供する
KR-1: 最新ソフトウェアを導入する
KR-2: 顧客へのレスポンスタイムを30%削減する
KR-3: 顧客の維持率を80%にあげる

もっといろいろなゴールやKRが考えられるが、問題は、何を指標として捉えるかということ。そして、対象の完了状態を定義できていなければならない。メンバーの価値観に従って漫然と日常業務をこなすことも可能であるが、それでは到着地点が不明であり、進捗をリアルに感じられない。“目指す処”がなければ、モチベーションも保持しにくいだろう。

上記に列挙したようなゴールに向かったKRに対して、日々のアクションがあるという概念がGKAである。アクションのサンプルについては次回以降に示そうと思う。

ゴールだって通過点だ

Bob Dylanが、ノーベル文学賞を受賞したのでそれにあやかってみる。

The thing I can do with a confidence be itself. Existence as itself is by what kind of man, too.
たとえ自分という存在が、どんな人間であろうとも。目的に到達したとは思っちゃいけない。いつもどこかに向かう過程だと思うことだ
Source: Bob Dylan

Written by Shinichiro Okuno
Written by Shinichiro Okuno