組織行動学の歴史 – テイラーからGKAまで

執筆者 | 12月 31, 2020 | GKA, MBO, OKR, マネジメント | コメント0件

組織行動 ( Organizational Behavior )とは、組織環境におけるヒトの行動研究、またはヒトの行動と組織の間にあるインターフェースのことだ。組織行動研究は少なくとも次の3つの方法で分類可能である。

1)組織内の個人 (micro-level)
2)ワークグループ (meso-level)
3)組織の振る舞い (macro-level)

いずれにしても、組織行動研究の主な目的の一つは、「組織生活のよりよい概念化を展開すること」である。GKAまでどのように組織行動が概念化されてきたのか振り返ってみたい。

ヒトを機械と同じように考える

1911年、フレデリック・W・テイラーが55歳のときに、経営学の創生に最も大きな影響を与えた「科学的管理法の原理」を発表した。これは現在でも経営管理の場面で用いられる画期的な手法であった。

テイラーの科学的管理法の代表的実験に、「シャベルすくいの実験」というものがある。鉄鉱石や石炭、灰などの運搬作業で、シャベルですくう量をいくらにすれば1日に最大になるかを研究した。必死にすくえー!っていう根性論ではないのだ。みんな笑顔で楽しくすくおう!ってことでもない。

データを用いて、再現性があるよう科学的にアプローチするのだ。ヒトの感情など考慮しない。労働者は、とにかく能率的に仕事をすればよい。そういう考え方だ。

テイラーは「ひとすくいには適切な重さがある」と仮定して、実験を重ねながら研究を続けた。すると、シャベルでのひとすくいの量は、9.5kgが最も疲労が少なく最大の作業量が得られるという結論に達した。

作業者は指示書に従ってきっちりとその日に使うシャベルの種類を指定され、すくい方の悪い癖などを指導者の指示に従って直し、あるいは休憩のとり方についても指導を受け、さらに様々なことに対して援助を受けた。

最終的に、一人当たりの生産高は3.7倍の59トンを達成し、賃金は1.7倍となった。

これは画期的で圧倒的な成果を残したのだが、教育という名の下に徹底的に指導し、割り当てられた作業量をやることで高給を得られるという「経済的欲求にフォーカス」したモデルといえるだろう。

実は人間関係が大事なんじゃないのか

1920年代、ハーバード大学の研究グループによって、組織におけるインフォーマルな集団の役割や人間関係といった社会的要因の重要性が見出された。

ホーソン工場で行われたかの有名なホーソン実験(1924ー1932)では、当初、作業スケジュールや証明などの物理的環境や、管理手法や作業方法が作業効率にどのように影響するかを検討するのが目的とされていた。しかし、その目的を裏切るように、職場仲間からの圧力、インフォーマルな集団規範、自負心などが、生産性とモラルに大きな影響を与えるという結果となった。

Aerial view of the Hawthorne Works, ca. 1925

先の科学的管理法では、職場の人間関係や、集団での個人における人間的な側面は、全くといっていいほど無視されていた概念である。そのため、この人間性への指摘は新しい視点となった

会社と従業員の幸福を一致させようとする動き

さて、1950年代になるとP.F.ドラッカーが次のことを言い始める。

個人の強みと責任感を発揮させつつ、同時に全員のビジョンと努力の方向を一致させ、チームワークを醸成し、個人の目標と全員の幸福を調和させるような経営原則

2020年代でいえば、なぜ全員のビジョンと個人がリンクしないといけないんだという批判があり得そうである。しかし、人間の集団としての会社という枠組みが維持されるのならば、その中に個人が存在するわけであり、それらは互いに調和して何かを目指すのであるという概念として理解できる。

ちょうど同時期に、モチベーション理論としてはもっとも有名なマズロー ( Masdslow )によって提唱された欲求段階理論( Maslow’s hierarchy of needs )がある。

「自己実現」という言葉は誰でも聞いたことがあるだろう。マズローは、自己実現( Self-actualisation )という欲求を最高次に出すことで、わたしたちが仕事を通じて自己の能力を発揮することを望んでいるという観点に立脚し、さらには人間性への強い期待と価値を示したのではないだろうか。

ちょうどこの頃、MBO( Management by Objectives )という個々のスタッフに個人の業務目標を作成し、実行プランやその進捗状況に作成者が自ら管理する組織マネジメント手法が発生した。

MBOはアメリカだけではなく、日本にも大きな影響を与えたが、アメリカでは1980年代以降はあまり議論されなくなってきた。

実行するための方法

1970年代、 Andy Grove によって、目標を定義してトラッキングするためのフレームワークが登場した。それがOKRである。Groveは、「OKRの父」と呼ばれる。

OKRについては以前に示してあるのでここでは詳説しないが、「実行にフォーカス」した組織行動のためのフレームワークである。

やがてこのフレームワークはGoogleなどの多くのスタートアップ企業に採用され、彼らの成長を助けてきた。

Google共同創業者であるラリー・ペイジはOKRについて次のように語っている。

OKRはぼくたちが10倍成長を遂げ、しかもそれを繰り返す中で重要な役割を果たしてきた

John Doerr, Measure What Matters, 2018

コミュニケーションを重視

GKAは、2016年にGoalousというサービスのローンチ後にスマートフォン時代の新しい方法論が示されたわたしが提唱し始めたワードである。ビジュアルによるコミュニケーション不特定のメンバーによるゴールへの自発的なコラボレーションという新しい概念を前面に押し出し、ゴールへの活動を相互に称え合うことで存在を認め合うことが人間感情として最も大事なことであると定めている。

GKAの概念については、こちらが詳しいのでぜひ合わせてご覧いただきたい。

以上、テイラーからGKAまで、約100年の組織行動研究の歴史をご紹介した。


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